はっ・・・
ははっ・・・・・
ハッハッハッ・・・・
浅い呼吸を繰り返した。
舌をだらんと伸ばして、出来るだけ冷たい空気を
吸い込もうとしてみる。
喉が渇いた
カラカラだ。
踏みしめる足は頼りなくよろけて、それでも山奥へと歩き続ける。
必死に逃げ隠れして此処まで来たけれど、
身体の中に容赦なく食い込み、肉を破壊し骨を砕いている弾丸のせいで、
もうすぐ自分は死ぬだろう。
バカだ。
そう思って、大きな口をゆがめて笑ってみた。
ケモノとして産まれて、ケモノとして生きる
どうして其の事に満足出来なかったのか。
今更後悔しても仕方がない。
自分は、ただのケモノであるのに、恐ろしい事に人間に恋をした。
恋しくてこいしくて、張り裂けそうな胸が苦しくて
暖かな人里へふらふらとおりて、人間の住処へ近づいた。
少しでも恋するヒトの傍に居たかったから。
でも、自分はケモノなのだ。
ヒトとは相容れるはずは無い。
案の定、人間達に見つかり追われ、挙げ句、銃で撃たれた。
何発も身体を撃ち抜く冷たい鉛に悲鳴をあげて
だけど、一族の元へ逃げ戻る事は叶わない。
ヒトに恋するなど、ケモノとして一族を追われる事も当然の事だったから。
恋しいヒトに忌み嫌われ
仲間達から蔑まれ
たった独りで、死を迎える。
(死は孤独とイコールだけど)
ずるずると這いずるようにして、山奥の静かな湖のほとりに出た。
そこは何時もヒンヤリと静かで、ここなら、罵りの声も侮蔑の言葉も聞くことなく、
静かに命を終える事ができるだろう。
*
おびただしい数の弾丸に撃ち抜かれた身体を、岸辺に力なく横たえて、
狼は舌を伸ばし、冷たい湖の水を飲んだ。
身体を砕かれている痛みと苦しさは、そんな事では治まらなかったが
それでも、やっと安心する事が出来て、そのまま目を閉じる。
しばらくすると、前足や後ろ足から血が静かにひいてゆき、
身体が冷たくなってゆく。
とても寒い、と狼は思った。
でも、それもあと僅かの間だけだろう。
もう瞳を開ける気力も無く、暗い睡魔がゆっくりと這い上がってくる。
それと同時に、焼けちぎれるような痛みがひいてゆき、
胸の中心あたりから、くっきりと空っぽな孤独感が立ち上がってくる。
ああ、これが死ぬと言う事だ。
暗い睡魔にじわじわと飲込まれながら狼はそう思った。
これから自分は”死”という永遠の眠りにつく。
ならば、その眠りの前の一時、
夢を見よう。
短い夢を見よう。
狼の頭上、生い茂る木々を風が揺らし、
さらに遠い彼方に太陽が照っている。
ーーああ静かだ。
ーーとても、静かだ。
ーー・・・鳥のさえずりが聞こえる。
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