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はっ・・・
ははっ・・・・・

ハッハッハッ・・・・

浅い呼吸を繰り返した。
舌をだらんと伸ばして、出来るだけ冷たい空気を
吸い込もうとしてみる。

喉が渇いた
カラカラだ。

踏みしめる足は頼りなくよろけて、それでも山奥へと歩き続ける。
必死に逃げ隠れして此処まで来たけれど、
身体の中に容赦なく食い込み、肉を破壊し骨を砕いている弾丸のせいで、
もうすぐ自分は死ぬだろう。

バカだ。

そう思って、大きな口をゆがめて笑ってみた。
ケモノとして産まれて、ケモノとして生きる
どうして其の事に満足出来なかったのか。

今更後悔しても仕方がない。

自分は、ただのケモノであるのに、恐ろしい事に人間に恋をした。
恋しくてこいしくて、張り裂けそうな胸が苦しくて
暖かな人里へふらふらとおりて、人間の住処へ近づいた。

少しでも恋するヒトの傍に居たかったから。

でも、自分はケモノなのだ。
ヒトとは相容れるはずは無い。

案の定、人間達に見つかり追われ、挙げ句、銃で撃たれた。
何発も身体を撃ち抜く冷たい鉛に悲鳴をあげて
だけど、一族の元へ逃げ戻る事は叶わない。

ヒトに恋するなど、ケモノとして一族を追われる事も当然の事だったから。

恋しいヒトに忌み嫌われ
仲間達から蔑まれ

たった独りで、死を迎える。
(死は孤独とイコールだけど)

ずるずると這いずるようにして、山奥の静かな湖のほとりに出た。
そこは何時もヒンヤリと静かで、ここなら、罵りの声も侮蔑の言葉も聞くことなく、
静かに命を終える事ができるだろう。







おびただしい数の弾丸に撃ち抜かれた身体を、岸辺に力なく横たえて、
狼は舌を伸ばし、冷たい湖の水を飲んだ。
身体を砕かれている痛みと苦しさは、そんな事では治まらなかったが
それでも、やっと安心する事が出来て、そのまま目を閉じる。

しばらくすると、前足や後ろ足から血が静かにひいてゆき、
身体が冷たくなってゆく。

とても寒い、と狼は思った。
でも、それもあと僅かの間だけだろう。

もう瞳を開ける気力も無く、暗い睡魔がゆっくりと這い上がってくる。
それと同時に、焼けちぎれるような痛みがひいてゆき、
胸の中心あたりから、くっきりと空っぽな孤独感が立ち上がってくる。

ああ、これが死ぬと言う事だ。

暗い睡魔にじわじわと飲込まれながら狼はそう思った。
これから自分は”死”という永遠の眠りにつく。

ならば、その眠りの前の一時、
夢を見よう。

短い夢を見よう。

狼の頭上、生い茂る木々を風が揺らし、
さらに遠い彼方に太陽が照っている。








ーーああ静かだ。
ーーとても、静かだ。



ーー・・・鳥のさえずりが聞こえる。






テーマ : ショートショート - ジャンル : 小説・文学

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