目が覚めてベッドから抜け出し、窓を開けると
目の前が真っ白だった。
はて、これは一体?と暫し首を傾げて
何の事はない、辺り一帯が
濃い霧に覆われているのだと解る。
あまりにとっぷりと濃い霧なので
これはしばらく外に出れないと、窓を閉める。
こんな霧では、丘の上に座って外を見張る竜も
さぞや困っているだろうと溜息をつくと
慌ただしく玄関が叩かれて
何事と思えば、町内会長とその役員達が
神妙な顔をして立っている。
こんな濃い霧なので、丘の上の竜が困っているだろうと思う。
なので、我らで灯をともして少しでも、視界を良くしようと思う
そんな事を説明されて、さぁ貴女も早くと急かされるまま、
慌てて顔を洗い、服を着替えて外に出ると
白いマントと大きな提灯を渡される。
マントを羽織り提灯を持ち
皆で一列にならんで粛々と丘へ昇って行くと、
濃い霧に覆われながらも、そこには変わらずに巨大な竜が
かしこまって座り、その赤い瞳で北を見据えているのだった。
こんな霧では視界が悪くてお困りでしょう
私どもがお手伝いをいたします。
町内会長が、行列から進みでて
うやうやしく竜にそう申し出ると
大変にご苦労な事であるが、我には全く必要のない事。
心配させて逆に申し訳ない。早く村に戻られよ。
姿勢を崩さぬまま竜はそう応えて
北を見据えたまま、微かに頭を下げたようだった。
濃い霧の出る日は用心されよ。
北からのモノどもは、我が見はっているが
こんな日は忌々しいものどもが、
地から湧き出て這いずるものだ。
提灯の灯を離さず、早く村に戻られよ。
町内会長をはじめとする、私達は青ざめて
竜の言った通り、しっかりと提灯を持ち
丘をそろそろと降りて、霧の中の家路をたどった。
霧はますます濃くなり、足元もおぼつかないが、
提灯の灯がかろうじて、道を照らして、自分たちの帰る家が見える。
その道中、かさかさきしきしと、何かが軋むような奇妙な音が
私達の周りを走り回り、町内会長が緊張した面持ちで
列からはみ出る事無く、慎重に家路をたどるようにと皆に言い
皆それぞれに静々と自宅の中に消えて行った。
私もようやっと、自分の家にたどり着き
霧の中シルエットになった人達に
お疲れさまと頭をさげて、家の中に入る。
玄関先で、白いマントを脱いでばさばさと湿気を払い
ハンガーにかけて、玄関の壁に吊るし
提灯は、灯を消すのがなんとなく躊躇われて
そのまま部屋にもって入った。
大きな提灯の灯は部屋を丸く照らし
ああ、外には変わらずに赤目の竜が守り
家の中はこの提灯の灯があるのだから
いくら濃い霧が村を覆っても
何も心配することは無いのだと
温かい溜息をついてソファにもたれかかると
なんとも平和な睡魔が再び昇って来て
目が覚めれば、霧は晴れて
太陽が暑いほどに照っているだろうと
そんな事を思うのだった。
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