#65


自宅の向かいにある神社の森に
奇妙な生き物が時々訪れているのに
気がついたのは最近だ。

こうして朝食を食べながら、パソコンに向かい仕事をしていると
神社で一番大きな樹のてっぺんが、大きくガサっガサっと揺れて
烏が遊んでいるのかしらんと、目をあげてソレを見つけた。

見つけた、と言うのはちょっと表現としておかしいかも知れない。
ソレは別に隠れていた訳でもなく、朝日に照らされて実に楽しそうに
樹上でぴょんぴょんと跳ねていたのだから。

赤銅色の肌は健康そうにつやつや光っている
大きな尖った耳。
以外に逞しそうな両腕と両足には、
綺麗な細工の腕輪と足輪をはめている。

ぎょろっと大きな金の瞳。
ふさふさの草色をした髪の中から、
にょっきりと角が一本生えている。

パンツは皮のパンツのようだったけど
虎模様じゃない。

小さな鬼は、ぴょーんぴょーんと楽しそうに、
樹の上をいつまでも跳ねている。

何がそんなに楽しいのかなと、
しばらく仕事の手を休めてその姿を眺めていると
まるで何処かの見えない穴にすぽんと落ちるように
小鬼の姿は、ふいに消える。

不思議だなぁと小鬼が消えた神社の樹を眺めていると
小鬼に遠慮していた鳥たちが、騒々しく鳴き立てながら
樹の枝にとまり、いつもの朝の風景が繰り広げられる。

目を開けながら夢でも見ていたのかなと
首を傾げつつ、パソコンに視線を戻し
傍に置いていた、珈琲を飲めば、
それはさっきよりも随分と温くなっていて

ああ、小鬼に見蕩れていて、こんなに珈琲は冷めてしまった。
やはり、夢なんかじゃないんだよなぁと
苦味が薄れて酸味が強く出ている黒い液体を
身体の中に流し込んだ。

明日も小鬼に会えるだろうか
黒い液体の酸味を舌の上で転がしながら
そんな事を思っていた。










テーマ : ショートショート - ジャンル : 小説・文学

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