一ヶ月のうちに何日か、頭痛に悩まされる期間がある。
月のリズムであるのかなぁなどと、諦め半分
頭痛薬片手にじっと耐えるのだが、歳のせいなのかどうなのか
どうにもその痛みが、此処数ヶ月、酷くなっているような気がする。
頭痛が始まる時は、あ、もうすぐ来るなという前兆があるから解る。
だから、早めに薬を飲んで、じっと横になるのだが
なんだかその予兆が最近は無くなって来て、いきなり凶暴な痛みに
襲いかかられる事が多い。
ズキズキ脈打つような痛みは吐き気と目眩を伴い
意識を朦朧とさせる。
氷枕に顔をうずめて、薬が効くのをじっと待ちながら、
そう言えば、昔話だかなんだかに、こめかみが傷むので
ずっと其処を揉んでいたら、其処からニョロリと蛇が出て来て
驚いて、その蛇を追い払ったら、ソレは、空へと登って行って
こめかみの痛みは嘘のように無くなった、と言う話があったなぁ、
そんな事を思い出し、傷む場所を掌でマッサージしながら、自分の身体から
蛇が出てくるのはちょっと嫌だなと考える。
いや、蛇はさほど嫌いではないが、
やはり自分の身体から、ソレがニョロリと出てくる感覚は
ちょっとごめん被りたい。
ズキズキ傷む頭を掌で揉みほぐしながら、じゃあ何が出てくればいいかなと
くだらない事をずっと考える。
(くだらない事でも考えていないと、痛みの酷さに吐きそうになる。)
木の実とか、綺麗な石とか、そんなモノがコロコロ転がり出て来たら
良いかも知れない。
それは、蛇がニョロっと出てくるよりかは、ましな感触だろうし。
どうせなら、赤い色をした木の実なんかが良いんだけど。
ズキズキと頭は傷む。
喉が乾く
目がくらむ
早く薬よ効いてくれ
汗ばむ掌、指の間から、しゅるっと何かが這い出した。
それは、私のこめかみから、しゅるしゅると伸びて
空気を入れ替える為に開け放してある窓の柵に絡み付いた。
頭の中からずるずると某かが這い出る感覚。
ぞわぞわと背中が粟立ち、その引き摺られるような感覚に
吐き気がこみ上げる。
どうにも出来ず、丘に上がった魚よろしく
口だけぱくぱくしながら、ずるずると頭から這い出て
しなやかに窓の柵に絡み付き、葉を茂らせてゆくソレを眺めていた
まるで緑のカーテンのように、豊かに葉を茂らせ
見る間に大きな蕾をつけ、私の頭のなかから、最後のモノが
ずるんと抜け出るのと同時に、大きな蕾はするっと花開いた。
今まででも見た事の無い、見事な大輪の朝顔。
血の色のような赤い朝顔。
昇り始めた太陽のヒカリに照らされて
赤い花は揺れて、しゃりんと音をたてた。
ふと、我に返れば、頭痛は嘘のように引いていて
薬が効いたのか、朝顔が咲いたからなのか
何だか自分の身に起こった事なのに
信じる事がどうしてもできずに、
赤い大輪の花が、しゃりんと風に揺れるのを
ただボンヤリと眺めていた。
テーマ : ショートショート - ジャンル : 小説・文学