#68

突然降り出した雨が強くなった。
もちろん天気予報は聞いてたし、
用心もして、折りたたみ傘だって持ってる

だけど、この降りはちょっと激しすぎだ
ジーンズがびしょびしょになってしまう。

あわてて駆け込んだカフェで窓際の席に座り
やれやれと人心地。

ケーキセットをつついている間に
晴れるとは思わないけど、こんなひとときで
元気出して帰れるんだからいいじゃないかと思う。

ロイヤルミルクティーホットで
香りとその濃さを堪能して、暖かな溜息一つ。

其のとき、視線を感じて顔をあげる。

カフェの窓に映る端正な顔。
その顔に視線が合うと、向こうはあわてて視線をそらす。

あんまり綺麗な顔だから
チョコレートケーキを頬張りながら
ロイヤルミルクティーを飲みながら
ガラス越しにその顔を見つめる。

向こうも、珈琲を飲みながら、煙草をふかしながら
ガラス越しに私の顔を見つめる。

お互いに視線が合うとあわてて視線をそらしながら。

綺麗な顔だ(きれいなかおだ)
カップを持つ指のなんと細い事か(ほそいことか)

液体を飲む(のむ)
ケーキを頬張る(ほおばる)
煙草をくわえるその唇の(くちびる)

なんと誘惑的な事か(ことか)

其のとき、隣の女性グループのテーブルから
わっと賑やかな笑い声が上がった。
ふと我に返って、ガラスの向こうを見つめると
そこに見つめ合っていた人の姿は無かった。

消えてしまったと暫し茫然として、
雨降る外の景色を当然のように
うつしているガラス窓を眺めた。

不意に隣に暖かな人の気配が立ち、優しい声が尋ねた。

「その席はあいていますか?」

カフェの窓ガラスにうつった影が、
人の体温を持って、私の向かいに微笑みながら座った。


雨はまだ止みそうにない。
まだ、止まなくて良い。
ずっと、やまなくて良い。









テーマ : ショートショート - ジャンル : 小説・文学

* COMMENT *

tuna様

ふふふ。
窓ガラス映った
素敵な女性と熱いミーティングを
二人だけでね(笑

こんな雨の日なら
足留めくらうのも悪くない
ミーティングはキャンセルだ♪

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